この記事は、FabLab SENDAI – FLATユーザーの氏家 淳さんに執筆していただきました!
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・OpenPressによるアクリル版画〈前編〉
・OpenPressによるアクリル版画〈中編〉
6. インクを変えてみる
版はできたものの、インクと紙に何を使うかが悩みどころ。
エッチングの版画用の油性インクは結構高価なので、他のインクで良いものがないか探してみることに。
紙もインクをうまく吸い取ってくれるような種類でないと難しいのでは?
インクには、家にあった往年のRISOプリントゴッコの専用インク(油性)、開明墨汁、
ダイソーで調達したアクリル絵の具(水性)、水彩絵の具(12色で100円!)を試してみた。
版へのインクの乗りと溝以外のインクがうまくふき取れるかがポイント。
①プリントゴッコ専用インク(油性):
アクリル板にぺったり着いてふき取りもきれいにできる。油性で乾きが遅いことも作業しやすさにつながっている。
②開明墨汁:
アクリル板に乗せたとたんにはじかれてしまい、溝にうまく入ってくれない。
③ダイソーアクリル絵の具(水性):
アクリル板と親戚だからかべったりついてうまくふき取れない。
④ダイソー水彩絵の具:
はじかれる感じでうまく絵の具がのらない。
最終的にプリントゴッコ用ハイメッシュインクを採用。
7. 紙を変えてみる
ダイソーで絵の具を買っているときに目に付いた小さい水彩用紙とレポート用紙、
紙の専門店で買ったケント紙、表面ざらざらの紙、色紙のような紙、で試した。
①ダイソー水彩用紙:
表面が凸凹した水彩用の厚めの紙だが、湿らせてあれば安定してきれいに出せる。
何回も刷っていたら使い方に慣れてきた。
②ダイソーレポート用紙(アルファベット版):
ぺらぺらの紙なので水で濡らさない。文字の輪郭がくっきり強調された刷り上がりが面白い。
期待していなかっただけに驚いた。
③ケント紙:
空白部分のインクのふき取り具合で結果が大きく変わった。うまくいけばきれいだが、コツがいると思われる。
④表面ざらざらの洋紙:線がにじんだようになりボケて見える。
⑤色紙のような紙:③~⑤の中では一番きれいに出ている。
紙による違いはそれぞれあるものの、表面が粗い紙の場合は紙を濡らして湿らせてあればそう失敗することもない。
8. 感想
アクリル板がインクとなじみにくく、水性よりも油性インクのほうがきれいに出ることが多かった。
線がくっきり出るので、それを生かした版画にするのが合っていそう。
おわりに
結果的におとなしくエッチング用版画インクと紙を買って試したほうが安上がりだったかもしれない。
アクリル版画は、原版をデータで作ってしまえば誰でも同じ版を使えるが、紙に刷るところがコツも要り、
なかなか同じ刷り上りにならないところが奥深い。
OpenPressはお手軽な汎用プレス機なので、使いみちはいろいろ考えられる。
版画でもエッチング、木版、MDF版(MDFで版を何枚も作って水彩の多色刷りとか面白そう)、
紙にエンボス加工をかけたり。FLATに実物があるので、どんなものか触ってみて、いろいろな使い道を試してみてほしい。
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