【レポート】アートノードTALK『Making ways of Making』を開催しました

2018-12-06

2018年11月24日、青葉区一番町のFabLab SENDAI – FLATを会場に、『Making ways of Making』と題したトークイベントを開催しました。本イベントは、せんだいメディアテークが進めるプロジェクト「アートノード」のTALKシリーズです。

今回のゲストは、韓国をベースに活動するHyun Parke氏。19歳まで韓国で過ごした後に渡米し、シカゴ美術館附属美術大学を卒業。現在は、デジタルテクノロジーだけではなくアナログな技術をも組み合わせながら、分野に捉われず柔軟に作品制作に取り組んでいます。

はじめに、Hyun氏より自身のバックグラウンドについての説明から。
元々は、家具づくりを生業にしたいと考えていたHyun氏は、大学時代にデジタルファブリケーション(3Dプリンタやレーザーカッターなどのデジタル工作マシンを使ったものづくり)と出会い、「マシンが自分のために動いてくれるとは!」と非常に衝撃を受けたそう。ですが、実際に利用してみると設計データの作成やパーツの仕上げ加工などが必要で、手作業以上に時間と労力を要することに気がついたと言います。
大学では、特殊な形状の刃で素材から造形物を削り出すCNCミリングマシンを使用することが多く、徐々に家具だけではなくユニークな作品の制作にも取り組むようになっていったHyun氏。しかしながら、大学卒業後はデジタル工作マシンを使用できる環境も、CNCミリングマシンを購入するためのお金もなかったため途方に暮れていたところ、約$1,000でマシンを自作できるという情報を発見。当時は電気関係の知識を持っていなかったものの、マシンの筐体を設計する技術を持っていたため、自作にチャレンジすることに。インターネットで世界中のマシンメイカーと情報交換をしながら、どうにかマシンを完成させることができ、最終的にはある建築会社がそのマシンを買い取ってくれるという結末が待っていました。
この経験から、作品だけではなくマシンにも価値を見出してもらえるのだという新たな気づきを得て、作品制作以上にマシンを作ることに面白さを見出すようになったのだそう。「自分しかのこぎりを持っていなかったら、自分しか切ることができない。」ある分野でトップになるためには、人が少ないところを見つけて自ら飛び込んでいくしかないのだとHyun氏は言います。

 

その後、様々な作品やマシンの制作に取り組むうちに、それらを作るためのツールやプロセスの公開にも関心を持つように。人々に物だけではなくツールも与えることで、よりクリエイティブな思考力を持たせることができ、こちらが想像していなかったような面白い結果が生じるのではないかと考えました。
とあるイベントで、鑑賞者が自由に花瓶のデザインを作成できるツールと、それを出力するための3Dプリンタを展示した際に、完成した作品を観た鑑賞者が購入可能かどうか尋ねてきたことがあったそう。「デザインは鑑賞者が作り、実物を作る3DプリンタはHyun氏が作ったものであるという状況に対し、デザインの所有権は一体誰にあるのかという疑問が鑑賞者に生まれたのが非常に興味深かった。」とHyun氏は話します。またこの出来事を通して、自分は問題を解決するために物を作っているのではなく、人々にデジタルと物質の間のギャップを感じて欲しいという思いが根底にあるのだと気づいたと言います。

 

トーク終盤には、参加者より「Hyun氏が普段制作をする上で重要視していることは何か?」という質問が。これに対し、「制作を始めたら、一度手を止めて外に見せることが重要だと考えている。そうすることで、それを観た人が新しいアイデアをくれることが多々あるからだ。自分の作品においては、いくらでもブラッシュアップすることができるため、”完成品”は存在しない。だからこそ、制作している物が完璧でなく役に立たないものであっても、良いものを目指していくためには、とにかく外に発信していくことが必要だと考えている。」とHyun氏。制作の目的として、自身の思想の表現に重きを置いていないからこそ、このようなプロセスが大きな意味を持つのかもしれません。

 

これまでに多様な制作活動に取り組んできたHyun氏のトークを通じて、軽やかにアイデアを生み出し、丁寧に探求をするというメイキングプロセスへの可能性を強く実感しました。

 

(小野寺)


 

「アートノード」とは

2016年度よりスタートした「せんだい・アート・ノード・プロジェクト」の略称です。
「優れたアーティストのユニークな視点と仕事」と、地域の「人材、資源、課題」をつなぐ、
せんだいメディアテークのプロジェクトです。

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