11月26日、『Slime Mold Geeking -微生物の動きをHackしよう! -』と題し、“バイオハック”をテーマとしたワークショップを開催しました。

 

講師をしてくださったのは、現在“バイオ(生物学)”をベースとしたハック・アートプロジェクトに取り組む西原由実さん。元々はインタラクションデザインを中心としたリサーチに取り組まれていましたが、2年前に“バイオ“の世界に送り込まれたのだそうです。

 

近年、世界各地で様々なバイオハックプロジェクトが行われており、夜光虫や大腸菌など用いられる微生物は非常に多種多様なのだそう。今回行ったのは、バイオハック入門として“粘菌”をコントロール(誘導)し、自分の好きな図柄を描かせるというもの。こちらの写真に写っている、黄色い粘菌を使用しました。

 

まずは粘菌のエサと粘菌の置き場所を決めるところから。粘菌を培養するとき、彼らは効率よくエサを得るために、エサ間の最短経路を繋ぐように繁殖していきます。その繁殖の仕方がまるで鉄道網のようであったり、効率の良さを生かして迷路を最短距離で解くことができるといった研究結果もあるほど。参加者の中にも、エサを山の形に配置して登頂ルートを描かせたいという方もいらっしゃいました。

 

次に、下書きをした紙の上にシャーレを置いて粘菌を並べていきます。今回は、西原さんがあらかじめオートミールで培養していた粘菌を、オートミールごとシャーレに配置しました。

 

参加されたみなさんの作品がこちら。粘菌のいちばんのお気に入りだという“オーガニックなオートミール”のほか、チョコレートや緑茶、コーヒーなど様々なエサから好きなものを使用しました。エサに呼び寄せるという誘導のほか、粘菌の嫌いなものをあえて配置することで、そこを避けるように繁殖させることも可能とのこと。ネジやアルミホイルなどといった金属はあまり好まないようなので、それを配置するとどんな繁殖方法をするのか実験している方も。

繁殖による変化が見られるまでは数時間かかるため、ワークショップ当日の作業はここまで。ということで、ここからは後日参加者の方々から、粘菌の繁殖の様子をご紹介します!

 


こちらは、オートミールを「キムワイプ」という文字の形状に合わせて配置したもの。どちらも実験開始から2,3日程度しか経っていないため、まだ文字を再現しそうな気配はありません。全体的に移動を開始してはいるものの、下部に棒状に配置したコーヒーのことは何となく避けているような様子です。

 

これらはどちらも左が2日目、右が3日目の粘菌です。上は新しいオートミールを置いていましたが、下は粘菌が付着していたオートミールしか置いていませんでした。その結果、どちらもエサを求めて移動する様子が顕著に見られ、特に下のものは外に出ようとしているようにも見えます。

 

また、粘菌は金属を嫌うことから、アルミホイルで囲んでみるという実験も。2日目にはまだ身動きが取れていなかった粘菌ですが、3日目では何とかアルミホイルの隙間を見つけて、逃げ出そうとしているように見えます。面白い!

 

私たちも粘菌を分けてもらったのですが、1週間近く何もせずに放っておいてしまったせいか、たくさんの粘菌がシャーレの外へ逃げ出そうとしています…。さすがにこれままずいので、新しいシャーレに少し引越しをさせ、残りの粘菌とはお別れをしました。FLATでもコツコツに粘菌を観察していこうと思うので、ご興味のある方はお声がけくださいね。


バイオをテーマにしたワークショップは、私たちとしても初めての経験だったのでどうなるかまったく先が読めなかったのですが、想像をはるかに超える面白さで、これはまた新しい扉を開いてしまったような気がします。(特に、参加者のみなさんが終始粘菌に対して「かわいい!」と連呼していたのが印象的でした。)例えば3Dプリントした造形物に粘菌を這わせたり、シルクスクリーン印刷のようにエサを好きな模様にプリントしたらどうなるのかなと。これはラボのプロジェクトとしてもやってみたくなってしまいますね。

同日に別会場で開催されたトークイベントのレポートも、また後日掲載予定ですのでどうぞお楽しみに!