スタッフ小野寺がただいま受講中のFabAcademyについてご紹介している『小野寺のファブアカデ道』。
前回に引き続き、今回はWeek04〜06の講義内容についてまとめます。
Week04〜06では、CNCを使ったはじめての電子回路制作や3Dモデリング、スキャニングなど、Week03までと比べて一気に課題のレベルが上がった印象。
– Week04: electronics production (Feb 12)
– Week05: 3D scanning and printing (Feb 24)
– Week06: electronics design (Mar 2)
【Week04: ELECTRONICS PRODUCTION】
Week04の課題は、CNCミリングマシンを使用した電子回路基板の制作。”FabISP”というモジュールをつくるとのこと。
通常、ラボでの基板制作には『紙フェノール』という板状の素材を使用します。『紙フェノール』は、表面に薄い銅板の貼られた板で、その表面を削ることで回路を作るというもの。
まずは基本的な操作方法を学ぶために、Illustratorでテスト加工用データを作成しました。素材をセットしデータをマシンに読み込ませると、黒い部分がエンドミル(CNCで使用するドリルのようなもの)でガシガシ削られていきます。このときにネジの締め忘れがあったり、 土台がでこぼこしていると確実に失敗するので要注意。
(詳しいドキュメントはこちら→04.ELECTRONICS PRODUCTION)
できた!特に使い道はないけどかわいい!
切削と切断では異なるエンドミルを使用する必要があり、切削用のものは径が0.4mmなので、ギリギリ0.42mmくらいまでであれば削れるとのこと。今回のテストでも綺麗に削れました。
マシンの使い方が分かったところで、課題で出されていた基板を制作していきます。
基板を切削し、
パーツをかき集め、
はんだづけをしてFabISPの完成!なんじゃこりゃ!
教わるがままに、AVRというデバイスを介してFabISPにプログラムを書き込み、その後PCと接続してコマンドを入力するとTerminalにこんな文字列が。今回つくったFabISPがPCにきちんと認識され、使用できるようになったとのこと。今後課題で使用していくATtiny44,45などといったマイコンにプログラムを送るためのものなのだそうですが、電子工作やその周辺に関する知識が皆無のため、なにがなにやらという感じで達成感はいまひとつ…。
ですが、次々出される課題をひたすらこなしていかなければならないのがこのFabAcademyなのです。
今回の課題は、3Dオブジェクトのデザイン・プリントと3Dスキャニング。
3Dオブジェクトは、“切削ではつくることが不可能な形状”でなければならないという制約が。
(例えばペットボトルのように中が空になったかたちなどをつくる場合、切削加工ではドリルの入り込むスペースが必要なため、いくつかのパーツに分割して制作したのちに組み合わせて最終形状をつくるというフローになります。しかしながら、3Dプリントであればおよそ一発で造形することが可能です。)
まずはマシンの特徴や、造形物の精度をみるための造形物をテストプリント。FLATの3Dプリンタは、熱で溶かした樹脂を積層して造形していくタイプなので、データを作成する際には樹脂の熱収縮について考慮する必要があります。凹部分と凸部分で収縮率はやや異なりますが、XZ軸方向は-0.35〜-0.2mm程度、Y軸方向は-0.1mm程度のサイズの変化が見られました。
3Dモデリングのトレーニングも兼ねて、普段はあまり作らないような曲線を多く用いたかたちをつくってみました。器がいくつも入れ子構造になった形状と、実際に回すことのできる風車の2種類です。
風車は粘土をこねて形状を把握するところからやったのが楽しかったのですが、入れ子構造のほうはあまり美しいかたちではなかったので、もう一度デザインし直したいと思っています。PCの画面上だけでかたちを決めるのは危険だなと改めて実感。
3DスキャンはフリーのAutodesk 123DCatchをしてみたものの失敗。このソフトでは、対象物の写真を様々な方向から撮影し、それを合成して立体物を生成します。しかしながら、今回は撮影用カメラを動かしたのではなく、対象物自体を回転させてスキャニングしようとしたためにこのような失敗が発生。これもまたリトライしてみなければ。あとはintstuctables等で公開されているスキャン用デバイスもいずれ作ってみたいなと思っています。
Week06では、ついに基板のデザインにチャレンジ。予め用意された基板のデータをもとに、少なくともひとつのボタンとLEDを加えて再設計するというもの。これまでで最もハードな課題です。
基板の設計には、Eagleというソフトを使用。まずは回路図をつくります。基板のデータから必要な電子部品をリストアップし、ソフトのライブラリから探し出して配置していきます。配置が済んだらパーツ同士をラインでつなぎ、地道に回路図を作成。
このような図ができました。もうただただ手を動かすのみです。
そして回路図が完成したら基板をデザインするための画面を開き、再びラインを引きなおします。本当に骨が折れる作業でした…。せめてもの余裕をと思い、下部を角丸にしてみるなど。
基板のデザインが完成したらWeek04と同様にCNCミリングマシンで切削し、パーツをはんだづけ。設計が想像以上に難しかったのと、今回の課題はこれで完了というのがいまいち腑に落ちなかったことで軽いパニックになり涙がでました…ものづくりで泣いたのは学生時代の卒業制作時以来です…
久しぶりにものをつくることがとても辛く感じた3週間だったなと。それと同時に、普段いかに自分の持つスキル内でしかものを作ろうとしていなかったか、また新しいスキルを取り入れていくことで作れるものの幅がどんどん広がっていくことの面白さを感じたのでした。
まだまだつづきます!