3Dプリンタの素材であるプラスチックの棒『フィラメント』、PLAという植物由来のプラスチックが原料であり、色もメーカーによって様々な物があります。昨今では100%プラスチックだけでなく、中には木の粉や金属の粉を加える事で、プリントした仕上がりを一風変わったものにする特殊なフィラメントも発売されているのです。

しかし、百聞は一見にしかず。実際に使ってみないと良し悪しは分かりません。
そこで!そんな変わり種の3Dフィラメントを数種取り揃え、実際にサンプルをプリントしてみました。

special filaments

国内のフィラメント販売店からフィラメントを9種類ほど取り揃えて、さぁプリント開始です。

Using Replicator2 from MakerBot

使用した3Dプリンタは工房にあるReplicator2、セッティングはLowで出力しましたが、温度だけは各フィラメント異なるので後述します。そして今回使った3Dデータはこちら、『Digitizer LaserCat』さんです。

printing cat by Replicator2

プリント中にモデルがプレートから外れないよう、フィラメントの食いつきが良い3Mの黄色いマスキングテープを使います。
各フィラメントに対する温度調整に苦労するかなー、と思っていましたが、すんなり9種類プリント完了しました。

どのネコがそのフィラメントでプリントされたか分かりやすいように、レーザーカッタで作ったレザーの首輪をつけました。

10 3D printed cats

10匹全員おさまるケースも作成しました。漆塗りMDF製です。

10 3D printed cats with their case

おさまるとこんな感じです。

10 cats in the case

ケースのフタは透明アクリルですが、ネコの番号に対応したフィラメントの名前と製造会社が彫刻されてます。

labels on case

では、ここから1匹1匹見ていきましょう。

1_COPPERFILL
銅フィラメント
 link
01copper
プリント温度:210℃
赤みがかった銅の粉末が入ったフィラメントです。金属の粉が入ったフィラメントはプリントしたモデルも重くなります。また、出力後に紙やすりをかけた後にピカールなどの研磨剤で磨くと、金属製のような見た目になります。(参照)

2_BRONZEFILL
青銅フィラメント
 link
02bronze
プリント温度:210℃
こちらは、青銅の粉末が入ったフィラメントです。しっかり仕上げをすれば、銅フィラメントと同じく金属っぽい見た目にすることもできます。

3_BRASSFILL
真鍮フィラメント
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03brass
プリント温度:210℃
次は真鍮です。実はケースの留め具をこのフィラメントで出力して、紙やすりで磨いてみたのですが、本当に真鍮製のボタンのような風合いになりました。軽くやするだけで、表面が光を反射してキラリと光るようになりました。プリント後の仕上げでもう一段階変化するのは面白いです。ただ、今回試したフィラメントの中で一番折れやすかったので、取り扱いには注意が必要です。
case side

4_Conductive
導電性フィラメント
 link
04conductive
プリント温度:230℃
その名の通り、電気を通すフィラメントです。ただ、抵抗ゼロで電気を流してくれるというわけではなく、ネコの頭とおしりにテスターをつけて抵抗値を測ったトコロ、170Ωくらいの抵抗を示してみました。モデルの形によって正確に抵抗を変えられるなら、とっさの時にパーツ屋さんに買いに行かなくても3Dプリンタで欲しい抵抗を出力なんてこともできるのかも…要実験ですね。ただ、プリントした後ノズルがとても汚れます(クリーニングに結構時間がかかりました)。あと、プリント中に少量ですが黒い煙がノズルの先から出ます。面白いけれども謎です。

5_Magnetic Iron PLA
マグネティックフィラメント
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05magnetic
プリント温度:200℃
鉄粉が配合されているので、このフィラメントでプリントされたモデルは磁石にくっつくようになります。
また、時間とともに錆びるみたいなので、それを利用しても面白いことができそうですね。

6_BAMBOOFILL
竹フィラメント
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06bamboo
プリント温度:200℃
竹の繊維が入ったフィラメントで、仕上がりも独特のやわらかな風合いになります。個人的にも表面の仕上がりが好みなのですが、竹の繊維が大きいせいなのか他のフィラメントよりも詰まりやすい印象を受けました。

7_Glass Filled PLA
ガラス強化フィラメント
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07glassfilled
プリント温度:200℃
ガラス素材を配合することで、より強度を上げたPLA。『一般的なPLAフィラメントよりも、1.4倍強い引張強度、1.3倍の衝撃靱性、1.9倍の柔軟性(PLAよりも3.4%の伸び率)を実現しています(参照)』とのことなので、次回なにか頑丈なパーツを出力する際に使ってみようかと思っています。

8_GLOWFILL
蓄光フィラメント
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08glow
プリント温度:210℃
一見ただの白いPLAなのですが、出力したモデルを暗闇に置くと…
08glow_dark
光ります。 延々といろんな形のきのこをプリントして暗い部屋に並べてみたいですね。一緒にやりたい方募集中です。3Dモデリングの鍛錬をしつつ、デジタル腐海を作り出しましょう。

9_Biome3D Natural
分解性フィラメント
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09silk
プリント温度:200℃
土に埋めれば100%分解されるという地球にやさしいフィラメントです。こういった作るだけではなく、周りのことも考慮したフィラメント(産廃から作ったフィラメントなど)も増えてきてます。シルクのような仕上がりで、光をきれいに反射します。

10_normal clear PLA
PLA透明フィラメント

10normal
プリント温度:230℃
比較用に普通のPLA100%フィラメントも出力してみました。色は透明です。

落ち着きを見せ始めている3Dプリンタですが、一旦爆発的な広がりを見せたからこそ素材の選択肢の幅が出たり、ユーザー同士の情報交換が盛んに行われています。日々、色んな新しい試みが世界中で行われているのは見ていて飽きませんね。
caseing_front
ではでは!

※補足
今回紹介した変わり種のフィラメントに含まれる異素材の粉末がノズルにつまり、3Dプリンタの故障の原因になってしまうこともあるので、こういったフィラメントを使った後は、ふつうの100%プラスチックのフィラメントを送り出してノズル内部に残っている残りカスを全部押し出しておきましょう。実は今回クリーニング専用のフィラメントも買って、合間にノズルをキレイにしていたんですが、コレ調子良かったです。