こんにちは、小野寺です!

スタッフ大網、益田によるレポート Part 1レポートPart 2に続き、私からもFAB CAMP”のレポートをさせていただきます!

 

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10月10日(土)〜12日(月)にファブラボ北加賀屋で開催された“FAB CAMP”では、2日間にわたって様々なワークショップが行なわれ、ファブラボ仙台はそのうち4種類のワークショップを担当し、私小野寺は“Making Bending Iron Workshop”をメインで実施しました。

“Making Bending Iron Workshop”の目的はただひとつ、「木を曲げるための道具をつくる」ということです。

 

通常のワークショップでは、事前に主催者やファシリテーターが入念に段取りを行なうことがほとんどですが、今回こちらでご用意したものは“何種類かの厚さ5mmの木材”“木を曲げたいという気持ち”のみ。事前準備が全く行なえていないという、主催者としてあるまじき状況だったのですが、「ファブラボに関わる人たちが集まっているのだからなんとかなるだろう!」と、参加者のみなさんのお力を信じてワークショップを始めました。

 

「とにかく木を曲げたい」という非常にざっくりとした希望をかたちにするために、まずはどんなBending Ironを作るかについてディスカッション。

ツールのサイズはどれくらいなのか、どんなシチュエーションで使用するのか、材料はどうするかなどの意見を出し合い、最終的に以下の条件を満たしたものを作るというところに落ち着きました。


1.およそA4サイズに収まること。
(使用頻度が高いツールではないので、収納がしやすい必要があるため。)

2.アイロン部分が可動式であること。
(作りたい形状によっては、アイロンが固定されていると不便な場合があるため。)

3.どこのラボでも簡単に作ることができるものであること。
(機材に頼りすぎてしまうと、ものによっては制作できないラボが出る可能性があるため。)


 

Bending Ironのイメージが見えてきたところで、材料の買い出しです。ホームセンターの店頭に並ぶたくさんの工具や部品を前に、「これを使えばこんなこともできるかもよ?」などとどんどんアイディアを膨らませていきます。その中で「簡単に作ることができる」というBending Ironの制作条件の一つを満たしている「ニクロム線ではなく、はんだごてを熱源として使用する」という案を採用しました。

 

材料を手に入れたところで、次は設計班木材加工班に分かれての作業です。

木材加工班は、まずはじめに木材の曲げ実験を行ないました。
ワークショップ開始時に行なった実験では、前日夜から水に浸しておいた木材を家庭用アイロンで加熱して曲げてみたのですが、水分量の不足や温度の低さなど様々な課題が見えてきました。そこで、ファブラボ北加賀屋に大きな鍋をお借りし、そこに水と木材を入れて3時間ほど煮込んでみようということに。

 

じっくり煮込んだ木材を、ファブラボ北加賀屋に落ちていた鉄パイプに押し当てて力を加えてみると、ある程度は曲がったものの、カーブが描かれたというよりも折れ曲がったというような印象です。これは、木材の厚みと温度の下降が原因であると考えられます。温度の下降については、Bending Ironを使用すれば解決が可能なので、今回は木材の厚さを5mmから3mmに削ることで曲げやすさを向上させることにしました。

 

設計班でも、Bending Ironの設計や材料の加工が進められていきます。

 

まずは、Bending Iron本体をつくります。
アイロン部分は、熱源役のはんだごてをアルミパイプ内に入れることで役割を担わせようという作戦です。はんだごてはそのままだとアルミパイプとの接地面が少ないため、ファブラボ仙台が廃材FAB用に持ってきていたアルミ線を巻きつけ、更にアルミホイルで補強をしました。なかなかの力技です。

 

ファブラボつくばの井村さんにお持ちいただいたお手製変圧器とはんだごてをコンセントにつなぎ、恐る恐るアルミパイプに触れてみると、じんわりとした温かさから徐々にやけどしそうな熱さに変わってきました!良い調子です!

 

そしてそれをA4サイズにカットした板材(ファブラボ北加賀屋で拾ったもの)に取り付けると…

 

できました!Bending Ironの完成です!やったー!(手前が井村さんお手製の変圧器です。)

 

ツールが完成したところで、早速曲げ加工実験開始です!
今回のBending Ironは「アイロン部分が可動式」なので、作業エリアに余裕が生まれ、木材にきつめのカーブをつけることも可能なのです。素晴らしい….

 

と、ツール自体には問題は無かったのですが、「これなら5mm厚の木材でもいけるのでは?」とやや調子にのって加工したところ、失敗をしてしまいました…。力を加えるスピードが早すぎて折り目がついてしまっています。気を引き締めて再チャレンジです。

 

今度は3mm厚の板材を使用して“曲げ”と“煮込み”作業を何度か繰り返してみたところ、想像以上に綺麗に曲がりました!すごいすごい!

 

更に、先ほどは失敗してしまった5mm厚の板材も、アイロンを木目に合わせて力を加えたところ、こんなにも綺麗に曲がりました!もちろん、力を加えすぎると簡単にヒビが入ってしまうのですが、まさかここまで曲がるとは思ってもいなかったので感動しました…

今回の“Making Bending Iron Workshop”を通じて学んだ、木材の曲げ加工のコツは3つあります。


・曲げ加工をした後に木材の形を固定しておくこと。

・曲げ加工時に木材の温度をキープすること。

・曲げと加熱を繰り返し、焦らずじっくり加工を行なうこと。


どれも木材加工のプロの方やご経験されたことのある方にとっては当たり前のことかもしれませんが、実際に体験してみると、温度や力の加え方などといった言葉では理解のしにくい感覚的なことを知ることができるので非常に勉強になりました。

また、今回制作したBending Ironは温度の調整次第ではアクリル曲げ器としても充分に使用可能です。後ほどFabbleにも制作方法にフォーカスしたワークショップレポートをアップするので、ぜひみなさんも制作&改良にチャレンジしてみてください!

 

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現在ファブラボ仙台では、「伝統工芸・素材からものづくりの未来を考える」をテーマの1つとして活動を行なっています。今回の“FABCAMP”でも、各スタッフ異なるワークショップを担当したものの、「素材の活用方法を広げる」ということをベースに内容を検討してきました。それぞれ、得られた学びや発見は異なると思いますが、私は“実感”というキーワードに気づけたことが一番の収穫でした。

普段ラボを運営していると、そこへ訪れる方々にどうやったら楽しく快適にものづくりをしてもらえるのか、どんなサポートが必要なのか、どうしたら面白いものを生み出せるのかなど、ものをつくるという行為そのものや、作り出されるものに意識が向いてしまいます。ですが、こうやって自由にものづくりに打ち込んだり、失敗したり、実験することのできる環境が与えてくれる最も重要なことは“実感”なのかなと。例えば、今回私が担当した“Making Bending Iron Workshop”で行なったことや得られた知見は、木工業界では常識かもしれませんし、少し考えれば予想がつくことばかりかもしれません。ですが、「曲げと加熱を繰り返して木材に徐々にカーブを付けていくことが重要」なんていうことは、非常に感覚的な作業なので、やはり体験しなければ得られなかった発見です。

なにかを行なうとき、ある程度予想を立てて実行するかどうかを決めることも大切ですが、まずは触れてみたりいじってみたり自分で作ってみたりということにも、大きな意味があるのではないかなと思いました。素材や道具、機械の扱いにチャレンジしてみることはもちろん、自分で実際にものを作ってみて制作工程や仕組みを実感することで、新しいアイディアが生まれてくることもたくさんあるのではないでしょうか。

今後は“実感するためのものづくり”という言葉をキーワードとして、ラボの運営やプロジェクトに取り組んでいきたいと思います。

 

最後に、今回ワークショップにご参加いただいたみなさん、日本各地のファブラボのみなさん、“FABCAMP”をとりまとめてくださったファブラボ北加賀屋のみなさん、白石さん、本当にありがとうございました!またみなさんにお会いできるのを楽しみにしています!!