速攻やろう!Aチームとは、『誰かの悩みや困りごとに対する“解決の糸口”を、みんなのスキルを持ち寄って“短時間”で見つけ出す』ためのプロジェクトです。
今回は、FLATユーザーの秋山仁さんによるレポートでその模様をご紹介します!


〈速攻やろう!Aチームとは?〉
誰かのお悩みや困りごとを、短時間で手を動かしながら考えてみようという企画。ものづくりスペースを運営していくなかで、「何かを作りたいけど何を作ればいいかわからない」という人が思いの外多いことに気づきました。そこで、そもそも自分は何が欲しいのかを見つめ直す力を鍛える必要があると考えたところから、この企画が生まれました。とはいえ、ゼロから考えていくのは難しいため、まずは誰かの困りごとをベースにアイデアを出していくことから。人の困りごと聞くことで、自分のちょっとした悩みにも気づくことを狙いにしています。問題の解決そのものをゴールとするのではなく、解決の糸口を見つけることが最終目標。とにかく「考える」ことに重点を置いた活動です。

【速攻やろう!Aチームのルール】
・プロジェクトで制作された物やデータ、プロセスはWeb上で全て公開させていただきます。
・「他の人にとっても解決したい悩み事や困り事かどうか」を元に、検討対象を選定します。
・「絶対に解決する」のではなく「解決のための糸口を見つける」ためのプロジェクトです。
・どんな解決方法が出来上がったとしても、文句を言ってはいけません。(出来上がらない可能性もあります)
・互いに敬意を持って接し、楽しく活動していきましょう!

【開催日時】
2018年9月15日(土)16:00〜18:00

【参加者】
大網:FLAT運営者/2D及び3Dの設計、DIYカルチャーやデータ越しのものづくりが専門。
小野寺:FLAT運営者/専門は柔らかいもののデザイン、3Dより2Dのデザインがメイン。
Mさん:3DCAD経験者。現在は解析の勉強中。
Iさん:作業療法士。Makerの工房を立ち上げる。
Kさん:専門は電子工作。
Aさん:書き起こし。


 

今回のテーマは『コンビニのコーヒーカップを熱くならずに持てる取っ手』です。

大網:熱く感じずに持てることが目的なら、スリーブであれば良いでしょうね。スリーブではなくグラスみたいに持てる取っ手が良いんでしょうか。
Iさん:多分コーヒーカップをマグに変えたいんだと思うんですよ。コーヒーカップの取っ手は、ニーズが潜在的にはありますよね。障害を持ってる人は、直接カップを持てないということが多いんですよ。そういう取っ手があるんだったら助かるなと。
Aさん:そもそもコンビニのコーヒーカップって全部同じ形なんですかね。
大網:じゃあコンビニでコーヒーをみんなで買って市場調査してみますか。

<各コンビニでコーヒーを購入してきた一行>

大網:じゃあ早速やりましょうか。みなさんが買ってきたのはマクドナルドのはMサイズ、セブンイレブンのレギュラーサイズ、ミニストップのレギュラーサイズ、ファミリーマートのSサイズですね。
Kさん:材質はまちまちですね。
大網:Sサイズはすべて同じような径で作れそうですよね。ちょっとスリーブを付け替えてみましたが、入らないですね。それぞれ2、3mm違う感じですね。
Kさん:基本的にカップは円錐だから、カバーは円形にすれば良さそう。取っ手がカップの上部で引っかかるように作れば、他のサイズのものも大体使えると思う。ただ、小さいカップに合わせて作ると、大きいカップでは入らなくなるかもしれない。
大網:取っ手は上につけたほうがいいでしょうね。下につけると、重心がずれて支えるところがフラフラすると思います。それじゃあ、カップの径を測ってモデリングを始めましょうか?
Iさん:温度は何度ぐらいを想定しますか?70度くらい?
Mさん:PLAだと、ずっと握っていると柔らかくなってしまうかもしれませんね。
(※PLA:3Dプリンタで使用する素材。50度程度で軟化してしまうため高温のものには向かない。)
大網:だったら3Dプリンタじゃなくてレーザーカッターで作れた方がいいかな。MDFもありますが、レーザーカッターのほうが材質が選べますしね。平面的なパーツを組み合わせて作るほうが良いのかなと。
(※MDF:中密度繊維板)
Iさん:レーザーカッターを使うのは難易度が高いかもしれません。
大網:まず「こういう形状がいいよね」ってイメージを3Dモデリングで共有して、その後に要望を叶える制作方法を考えればいいかなと思って。今回デザインをしていく上でのルールがあると思うので、それに適応するマシンを選ぶ方が良いと思います。
Kさん:セブンカフェのレギュラーに合わせると上端に互換性がない。どういう取っ手にしようかな……絵を描いてみます。
大網:とりあえずコーヒーを飲みましょうか。

<コーヒー試飲>

Iさん:コーヒーが熱いからか、自然と手を持ちかえますよね。
大網:持ち帰ってくるとき辛かったですね。テイクアウトで「袋いりません」って言うと、このままスリーブ無しで出るんですね。

大網:それではKさんの描いたデザイン案を見てみましょう。これは取っ手が輪っかになっているということですか。
Kさん:輪っかでなくてもいいんですけど、T字になってます。当初は上下対称のT字を考えたんですが、そうすると大きいカップは入るけど小さいカップだとうまくいかない。T字が上にきてしまうんですね。制約条件は輪っかの上から下まで4cm。これ以上長くすると、取っ手をつけたときテーブルに当たっちゃいます。
大網:40cm以上あっても、片方が短くてもう片方が長いというのもありじゃないですか。上下をひっくり返して長くすればどっちでも使えるっていう。
Kさん:じゃあそれで寸法が決まりますね。これで今日買ってきた5つのコーヒーカップは全部カバーできます。

大網:今回はマシンを使うかどうかは気にせずやっていきましょう。
Kさん:丸く作るのは段ボールでも良いと思います。ダンボールで輪っかを作って、それを止める部分がT字の取っ手になっています。カバー自体は接着して組み立てるのではなく、何箇所か入った切り込み同士を組み合わせて、カップを入れて荷重がかかることで取っ手の部分で食い込むようにしたいです。とりあえず段ボールを使って考えていきましょうかね。
大網:ひとつ作ってみれば、それを型紙として使えるようになるのがいいですよね。
Kさん:もし段ボールで作るのであれば、図面を起こさずに直接下書きを描けばいいかなと思います。あとは、切り込みを組み合わせてロックする仕組みをもっと煮詰めたい。それと、今は段ボールで作ってみようと思って展開図を描いていますけど、FLATで作るんだとしたらモデリングして3Dプリントするのもありだと思う。
大網:手軽にできるのが良いから、今回は段ボールを使いましょう。持ったときに折れないかどうかは不安ですが。ただ、2枚張り合わせれば強度が出るので解決はできるのかなと。
Kさん:固定については一度置いておいて、とりあえずやってみますか。
大網:そうですね。やってみると何か分かるかもしれないし、案外強度があるかもしれないし。

大網:カバーを輪っか状にするための切り込みと、取っ手までをつなぐ部分がありますよね。そこの縦幅はどれくらいがいいですかね?2cmくらいにしますか。
Kさん:重さに耐えられる幅であれば何cmでもいいんじゃないですか。半分のところまで切り込みが入るので、それでも耐えられれば。
大網:3cmとかどうですか。切り込みが入ったとしても、1.5cmくらい支えがあれば耐えられるんじゃないかな。
Kさん:取っ手からカップまでの長さは、2.5cmくらいですかね。手袋をしても持てるようにしたいし。切り込み部分から取っ手までのダンボールの縦幅が3cm。取っ手の幅は2.5cmです。
Mさん:取っ手の下の出っ張りは1cmしかないから、ほんとうに指かかる程度ですよね。
大網:それでは、Rhinocerosで設計図を書いてプリントアウトして貼り付けるってどうですか。実際に作ってもらうときも段ボールに直接書くより、図面をプリントアウトして貼り付けるっていうやり方をしても良いと思うんですよ。
Kさん:カップの外側の止め方は、台形型を組み合わせる方法でいきましょう。止まればいいので、ここの寸法は特に決めていません。
大網:外側に向かって尾っぽみたいに広がっていないといけないんですね。
Kさん:設計図がA4サイズには収まらないので、分割してあとでつなげましょうか。
Mさん:ということは、この型紙があれば色々な柄の段ボールでもできるということですよね。
大網:PP(ポリプロピレン)とか、他の素材を使用しても良いですね。

Iさん:では設計図を貼って、ダンボールを切りましょう。
大網:カッターで切るときは、力を入れて一気に切ろうとするのではなく、すーっと何回も軽い力でなぞっていくと上手くいきますよ。
Mさん:やっぱり段ボールを使って良かったですね。3Dプリンターを使っても良かったけど、2時間じゃプリントは完了しないですよね。
大網:ちゃんと組み立てられるかどうか…。指が収まるくびれとか作っておけばよかったな。
Iさん:でも、アイディアを掘り下げてある程度イメージを示すところまでできて良かったです。家庭でできくらいのものだし。

<コーヒーカップの取手を組立てる参加者>

大網:ドキドキしてきた…!
Kさん:使えるかどうかは、1番小さいものと大きいものの2種類で試せば良いと思います。小さいカップから入れてみましょう。

一同:おー(拍手)
Mさん:あー良い感じですね! 荷重も多分大丈夫そうです。台形の組み合わせ部分もバッチリじゃないですか。
大網:取っ手はギリギリの7cm長さでもいいですね。問題はお湯を入れた後ですね。

Iさん:どんどん曲がっていってますね。ちぎれそう。
大網:上の付け根部分をホチキス留めてみても良かったのかな。さすがに重いからか、カップが斜めになってますね。まず重さを掛けてみてから設計すれば良かったかな。
Mさん:お湯をなみなみ注いでいるから、重さは1.5倍位になってるかもしれない。

<ホチキスで留めてみることに>

大網:上手くはいってるんですが、輪っかにするための切り込みの上部から開いてしまってますね。だからここをきちんと留めないと。
Aさん:でも上の部分が破れてますね。そもそも熱いコーヒーを安定しないのに飲めるんですかね。怖いですよ。
Kさん:取手ではなくダンボール越しにカップを持てばいいんじゃないですか。
大網:それはスリーブですよ!多分、スリーブを思いついた人たちも考えたんですよ。段ボールを使う取っ手があればいいじゃんと作ったけど、やっぱり強度がなくてダメだから、こうやって巻くだけでいいよねって。確かに剛性のある素材を使う方が楽ですよね。
Mさん:上から縦に荷重がかかったときに、形状が保たれるかどうかっていうのやっておけばよかったですね。例えば上から荷重かかると、切り込みの入った付け根の部分に荷重がかかって裂けてしまう。それを防ぐにはダンボールを二重にしてしまえばいい。段ボールだけでも良いですが、補強するとか、付け根だけ板のようなものを使って強くしてもいいのかもしれません。
Kさん:できれば、ホチキスとかは使用せずに段ボールだけで作りたいですよね。切り込みで組み合わせてる部分がダメなんですよ。でもここで留めないといけないし……
大網:でもやっぱりこれですよ。ひとつ完成形ができた途端、皆意見を言いやすくなる。もちろん失敗を繰り返すのは良くないですが、こうやって試作品を作ることがプレゼンする上で一番重要なんですよ。
小野寺:普段身近にある材料を使えるなら、後からテープを貼れば強くなるかなと。あと、重ねて裏で貼っちゃったほうが良いんじゃないですか?ビールジョッキみたいですけど。
大網:よれそうですが輪ゴムを使うというのもアリかな。ゼムクリップみたいなものとか……∪クリップ重ねたり、ヘアピンを打ち込んでみたり? でも、段ボールだけで組み上がるほうが良いですよね。そこまでいくと個人的な趣味が入ってきてしまうんですが……でも実際にやってみたら、様々な解決の糸口が見えてきましたね。
Kさん:改善点が色々とでてきました。結果からじゃなくて、プロセスで色々なテクニックを知れたというのもありました。
大網:今日のMVPはKさんですね!2時間という短い時間でしたが、皆フル稼働していて良かったと思います。第1回目にふさわしい内容でした。何か忘れていたスピード感を思い出したような気がします。今日はありがとうございました!

 

<終了>

 


本イベントは、今後も定期的に実施していきます。今回出たアイデアや課題については、再度試作をするなど各々研究を続けていただいてもかまいません。Facebook上にFLATのメンバーページがあるので、そこで一緒に取り組んでくれる方を募集し、プロジェクトとして走らせていくのもOKです!

次回の速攻やろう!Aチームは「1月19日(土)16:00〜18:00」に開催します。ご興味のある方はぜひお気軽に覗きにきてくださいね!