こんにちは、スタッフますだです。

12月21日(日)にファブラボ浜松と遠隔中継をして「メタルファブ」と称した金属加工勉強会を行いました。
ファブラボ仙台にあるデジタルファブリケーション機器は金属加工ができないので(レーザーカッターは彫刻のみ可能)、金属が得意なファブラボ浜松から基本的な加工方法を学んだ後、実際に手を動かして加工してみよう!という一日でした。

当日は、仙台箪笥協同組合/(有)長谷部漆工から長谷部嘉勝さんにお越しいただき、金属を加工する上での基本的な知識のほか、職人さんの視点からのアドバイスをいただきました!長谷部さん、本当にありがとうございます!(写真右)

?仙台箪笥とは?
仙台箪笥は江戸時代末期に誕生したといわれています。仙台藩の地場産業として生まれ、武士たちが刀や羽織を納める身近な生活財として愛用したようです。材料にはケヤキや栗を用い、大きさは、幅4尺(約120センチ)、高さ3尺(90センチ)。ケヤキの木目が浮かび上がる木地呂塗りに、豪華な鉄の飾り鉄金具が付くのが特徴です。生産のピークは明治から大正中期のことで、当時はヨーロッパにも輸出されました。戦時中は一時生産がストップしますが、戦後に再開され、現在も、指物、漆塗り、金具の3つの熟練した職人技によって、美しい箪笥がつくられています。(仙台箪笥協同組合HPより引用)

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今回は長谷部さんの御厚意で実際に仙台箪笥に使われている金具をお持ちいただきました!
ウェブカムでひとつひとつ写しながら長谷部さんに詳しいお話を伺います。

仙台箪笥は飾り金具の鮮やかさが特徴のひとつです。半透明で木地の木目が透かし見える「木地蠟塗り(きじろぬり)」という美しい漆塗りの輝きに、龍や唐獅子、牡丹や菊などの様々な文様が打ち出された金具がよく映えます。長谷部さんは普段こちらの金具部分を制作されているそうです。伺ったところ、箪笥一棹に使われる金具はなんと、200個!ひとつひとつ職人さんの手で鉄の板を打ち出して美しい文様をつくるそうです。

また、仙台箪笥の飾り金具は漆の焼き付けが施されています。鉄なのに黒く見えるのはその為です。錆び止めのメッキの代わりに、漆で焼き付けを行うことで仕上がりの堅さも堅く丈夫になるそうです。FLATでもよく自分たちで漆塗りをしているので、これは是非試してみたいです!

ちなみに、ファブラボ浜松から「漆の代わりにカシューで焼き付けすることは可能か?」という質問がありました。カシューでもよいそうですが、漆に比べると肉持ちは劣るそうです。では「カシューの上に漆を重ねるのは有りか?」。漆とカシューは相性がよくないのでやめたほうがよいそうです。もし漆と合わせるのであればウレタンがお勧めだと仰ってました。
また、真綿(絹)も僅かに付着している油分で焼き付けをすることができるとのことでした。油分で焼き付けができるのなら普通の油でもできるのか伺ったところ、ふつうの食用油でも可能とのことだったので今回は食用油で焼き付けの実験をすることにしました。

つぎに、ファブラボ太宰府から「お玉をつくるときはどういった作り方をすればよいのか?」という質問がありました。通常、金属板で何かを成型するときは叩いて伸ばしながら形作る「鍛金(たんきん)」という方法が用いられます。そのとき、打ち付ける用の台には「鉛台(なまりだい)」か「ヤニ台」を使うそうです。鉛台は使い終わった蚊取り線香の缶に鉛を流し込んで台をつくるとよいのだとか。そして、タガネ(金属を加工するときに用いる工具/ハンマーとセットで使うことが多い)を半分の長さにして先端に丸みをつけて整えたあと、台の上で鍛金すると均一に伸びるそうです。もしくは、素材が銅であれば鉄工用のハンマーを使うのもよいかもしれません。ただし、金属は叩けば叩くほど硬くなり割れやすくなるので注意が必要とのことでした。
また、ドーム型や箱をひっくり返したような中に空間のあるかたちを叩き出すときは、力加減によってはその面を潰してしまうこともあるので、中に松ヤニを流し込むとよいとのことでした。松ヤニが難しい場合は、油粘土のハードタイプでもよいとのことです。

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その後、ファブラボ浜松のマスター・竹村さんから金属同士のくっ付け方を教えていただきました。
トタン板の場合は亜鉛のメッキが施されているので、まずはそれをヤスリ掛けしてはがします。今回は80番→120番を使用しました。この時、金属板に油汚れや酸化膜がある場合は馴染みが悪くなるのできれいに落とします。次に、くっつけたい面と面を合わせ、加熱による母材表面の酸化を防ぐとともにろうの流れを促進させる為の「フラックス」と呼ばれる薬品を接合面に塗布します。ガスバーナーの火が青い炎になるよう調整して、接合部を加熱します。温まってくるとフラックスが結晶化→液体化するので、そのときに素早く接合部にろうを押し付けて溶かし、ろうを接合部全体に行き渡らせます。しっかり行き渡ったら水でフラックスを洗い流して完成!
ここで長谷部さんから「コストを抑えたいのならフラックスの代わりにホウ酸(顆粒)を使用するのもよい」とのアドバイスをいただきました。また、素材が同じでも厚さが異なるとバーナーで熱したときに温度差があってむずかしいので、そこは経験が必要とのことでした。異なる素材をろう付けするときも熱伝導率の差があるということを注意しなければなりませんね。


午後からは実際に手とデジタルファブリケーション機器を使用して加工の実験をしました!
今回は、銅板、ブリキ板、真鍮板(それぞれ0.3mm)の3種類でトンカントンカンしていきます!

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午前中の情報共有を経て各々やってみたいことが頭の中で膨らむ中、まずは全員ろう付けにチャレンジ。
室内だと火災の恐れもあり危険なので、ベランダに耐熱レンガを組んで簡易的な作業スペースをつくりました。もしみなさんも作業をするときは、まわりに引火性の高いものは絶対に置かず、側に必ず水の入ったバケツを用意してから始めてくださいね。

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まず、耐熱レンガの上に接合したい金属板(ブリキと銅)を乗せ、接合部にフラックスを流し込みます。(※寒いところに置いておくと容器の中でかたまっていることがあるので要注意)
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バーナーで熱しているとフラックスが結晶化してすぐ液状化します。
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引き続きバーナーで熱しながら、接合部をなぞるようにろうをつけます。
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ブラシでススを落とすように水の中でしっかり洗います。
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完成!くっついた!これは格好いい!
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その後は、各々いそいそと作品制作に勤しみました。

<お猪口>:銅板
3Dプリンタで出力したお猪口型をベースに鍛金。
2〜3時間近く叩き続けても壊れなかった3Dプリンタ製(PLA)お猪口にびっくり!これは使える!
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<小物入れ>:銅板
レーザーカッターで切断加工したMDFの雌型と雄型をつくってプレスした後、ろう付け。
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<ブローチ>:真鍮板
金切りハサミで長方形に切り抜いて成形したあと、食用油で焼き付け。
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<ろう付け>:ブリキ板と銅板
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<金平糖の蓋>:ブリキ
レーザーカッターで切断加工したMDFの雌型と雄型をつくってプレス。
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<ワッフル構造で鍛金>:銅板
Autodesk 123D Makeを使用してつくったワッフル状の型をベースに鍛金。
うまくできなかったので、雄型ではなく雌型をベースに鍛金したほうが成形しやすそうです。へこんでいる方に力をかける!
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<食用油による焼き付け>:左から銅板・ブリキ板・真鍮板
ガスバーナーで金属板を熱し、食用油を入れたスチール缶に投入。
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今回参加したFLATメンバーは全員金属加工初心者だったので、ろう付けはもちろん、鍛金・プレスもだいぶ手こずりました…。何とかかたちにはなったものの、やはり長い年月を掛けて経験と知識を身につけた職人さんにはまだまだ及ばないなと実感しました。今回は実際の作業時間が3〜4時間と短く、加工用の道具をつくらず実験も充分に出来ていない部分があったので、これからもっと研究を重ねて加工方法を学んでいきたいとおもいます。

今回お力添えいただいた長谷部さん、ファブラボ浜松のみなさん、そして途中参加してくださったファブラボ太宰府、ファブラボ佐賀のみなさん、本当にありがとうございました!
matome


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↑スタッフ小野寺が勢いでつくったポスター

ちなみに、今回は「メタルファブ」というタイトルだったのでメタルを流しながら作業しました!やっぱり金属を加工するときはメタルですね!大盛り上がりで終わったメタルファブ、次回開催日は未定ですが、第2回も開催したいと思っているのでその際は是非みなさん参戦してくださいね!お待ちしてます!