こんにちは、スタッフ小野寺です!

ファブラボ仙台では、工房の運営の他にスタッフそれぞれがプロジェクトに取り組んでいます。今日はそのうちの一つマテリアルプロジェクトの中から、小野寺が中心となって取り組んでいる和紙プロジェクトについてご紹介します。

 

これまで和紙プロジェクトとして、日本各地の和紙に関する調査や白石和紙を使った紙糸づくりを行なってきました。そして今回、とても幸運なことに紙漉に関する一連の流れを『手すき和紙工房 潮紙』さんにて学ばせて頂けることとなりました。

 

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『手すき和紙工房 潮紙』(以下『潮紙』)さんは、宮城県と山形県の県境、笹谷町の集落にあります。代表の塚原さんは、“宮城県に400年伝わる柳生和紙工房で8年間修行し、沿岸部の障害者施設で和紙を漉いていたところ被災しました。施設は紙すきから撤退し、柳生の職人も最後の一人を残すのみとなってしまいましたが、先人の智慧を後世に伝えていきたいという思いから、自身の工房を構え再び紙を漉く決意をしました。”(手すき和紙工房 潮紙WEBサイトより引用)工房は2014年3月に竣工し、現在は昔ながらの手漉き和紙づくりのほか、コンニャク粉や柿渋で加工をした強靭紙などを用いた製品の開発を行なっています。

 

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『潮紙』さんでは、紙づくりに使われるトロロアオイといった植物のほとんどを自分たちで栽培しています。はクワ科の植物で、樹皮繊維を和紙の原材料として用います。また、トロロアオイとはアオイ科トロロアオイ属の植物で、根っこから粘液(ネリ)を採取することができます。その粘液を紙漉きの際に水に混ぜ込むことで、楮繊維が水中にムラなく分散し、美しい紙を漉くことができるようになります。この粘液は、水温が約15度前後になると粘性が低下してしまうため、紙漉き作業は気温の高くなる夏場には向いていません。なので、かつては冬場の副業として紙漉を行なっていた農家も多数存在していました。

 

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紙漉実習1日目は、まずトロロアオイの仕込み作業からです。

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トロロアオイの粘液を採取するためには、根っこを叩いて潰し、水に浸ける必要があります。なかでも、粘液は特に根っこの皮と芯の間に多く含まれているそうです。今回ご用意頂いた根っこはやや太めとのことでしたので、初めに皮と芯に千切る作業を行ないました。

 

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千切った根っこを石臼に入れ、全体がネバネバしてくるまでおよそ15分ほど杵で叩いていきます。

 

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充分に叩いたら布袋に入れ、瓶に張った水に浸しておくと、どんどん粘液が染み出してきます。

『潮紙』さんのある宮城県の笹谷町は昔から水に恵まれており、工房の中にも川が通っています。その冷たく綺麗な水を使って紙を漉けることも、『潮紙』の自慢の一つだと塚原さんはおっしゃいます。ただ、笹谷町は積雪も多くかなり冷え込むため、紙漉き用に溜めていた水が凍ってしまうことが多々あり、12月末〜3月頭頃まで工房では紙を漉くことができないのだそうです。原料の栽培から仕込み、紙漉きと、それぞれ独立した作業なのではなく、気温や天候に合わせて、季節に寄り添いながら仕事が行なわれているんですね。

 

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まずはここまで、紙漉きにかかせないトロロアオイの仕込み作業についてご紹介しました。次回の記事では、いよいよ紙漉き作業についてご紹介します!